大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 昭和33年(ネ)107号 判決

控訴人(原告) 石井義勝

被控訴人(被告) 上川税務署長

原審 旭川地方昭和三二年(行)第三号(例集九巻三号49参照)

主文

原判決を取り消し本件を旭川地方裁判所に差し戻す。

事実

控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し、控訴人の昭和三十年度の総所得金額を金五十三万四千百七十三円とした更正を総所得金額三十四万二千六十二円と変更する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴人において「昭和三十一年十一月二十七日第二次更正処分に対し不服の申立をなした。」と述べ、被控訴代理人において右主張を否認した外、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

(証拠省略)

理由

成立に争いない甲第二号証、乙第一号証の一、二、第三号証、当審における控訴本人尋問の結果によれば、控訴人は被控訴人から昭和三十一年十一月七日再調査棄却決定の通知及び控訴人の村会議員としての給与所得金八千九百二十五円を加え、右金額を含む所得に対する所得税額を定めたほかは第一次更正処分と内容を全く同一とする第二次更正処分の通知とを受けいずれも不服であつたので両通知書を同封して同月二十七日被控訴人に対し審査を求める趣旨の書面を提出したこと、被控訴人はこれを札幌国税局に廻送し、同局協議団はこれを再調査決定に対する審査の請求と解して控訴人に指示して書面の追完を求め、よつて、控訴人は第一次更正処分を表示した審査請求書を同年十二月二十三日札幌国税局に提出したこと、右十一月二十七日当時は既に第二次更正処分によつて第一次更正処分が効力を失つていたのであるから、右審査請求には第二次更正処分に対する不服申立の趣旨をも含んでいたことが認められる。従つて、控訴人は第二次更正処分に対しても審査の請求をなしたというべきところ、本件のように第一次更正処分を不服として再調査請求をなし、これが棄却されると同時に前叙のような第二次更正処分がなされたような場合には、第一次更正処分の金額の範囲内においては第二次更正処分に対し更に再調査請求をしても棄却されることは明らかであつて、これが請求をなすことは無意味であるから、かかるときは再調査請求をなさず直ちに審査請求をなし得る正当の事由があるものと解すべきである。しかして、右第二次更正処分に対する審査請求についてその決定がないまま本訴が提起されたと認められるところ、この場合の出訴期間の終期は審査の請求をなして三箇月を経過した日から起算して六箇月と解され、本件訴訟が昭和三十一年十一月二十七日から起算した終期の昭和三十二年八月二十六日以前に提起されていることは記録上明らかであつて、第二次更正処分は実質的には第一次更正処分を包含するものであるから、新訴は旧訴提起のときに遡つて訴訟提起の効力を有するものと認められる。従つて、控訴人は第二次更正処分に対し審査請求をなし、その決定がないままに出訴期間内に本件訴訟を提起したと認めるに支障がないから、新訴は適法である。されば新訴を不適法であるとする原判決の判示(原判決七枚目表末行以下)を前記のとおり変更し、その余の原判決の判示は相当であるからこれを援用する。

しからば、右と判断を異にして本件訴を却下した原判決は不当に帰するからこれを取消す。

よつて、民事訴訟法第三百八十八条により主文のとおり判決する。

(裁判官 石谷三郎 渡辺一雄 岡成人)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例